得失点差と勝ち点のLoveLoveな関係小中先生はJリーグは失点の何倍得点すれば優勝できる/降格しないリーグなのでしょうか? で、『直感的には「1失点する間に何点取れるか?」がすべての球技での本質であろう,という立場です』と仰っている。 でも自分的には「サッカーみたいにロースコアが普通の球技はやっぱり得失点差じゃない?」という考えをとる。 だってスコアレスドローを延々と繰り返す、たまにセットプレーで1点とって逃げ切る、というチーム戦略もあり得るもんね。 で、素人の考え。 得失点差と勝ち点には強い相関があるだろう。それを数値化してみよう。 Vゴールが廃止された2003年から2020年までのJ1全チームについて、 ・1試合当たりの勝ち点 ・1試合当たりの得失点差 を調べてみた。データ数は320個である。これをExcel君に調べさせてみた。 そうすると相関係数=0.943 と極めて強い正の相関があることがわかった。ここまでは当たり前。 そして、勝ち点と得失点差の近似式もExcel君に計算させた。 y=0.6714x+1.3796 という数式が出てきた。yが勝ち点、xが得失点差である。 元々、 ・ある試合で得失点差がプラスのチームは、勝ち点3を得る。マイナスのチームは勝ち点を得られない。 ・得失点差がゼロの場合、両チームが勝ち点1を得る。 というのが今のJ1の勝ち点制度である。 1-0の時の勝ち点は3。でも10-0でも勝ち点は3 0-0の時の勝ち点は1 1-0と0-1の2試合平均の得失点差はゼロ。勝ち点は1.5点/試合 これから考えたら、上記の数式のy切片(x=0の時のy)は1と1.5の間ぐらい、というのは納得できる数字である。 さて、18年間の320データで 相関係数 =0.943 平均勝ち点=平均得失点差×0.6714+1.3796 だったのだが、実は2016年から2020年までという比較的最近の場合(データ数90個)も計算してみた。 すると、 相関係数 =0.942 平均勝ち点=平均得失点差×0.6993+1.385 と、Excel君が答えた。(数値の責任を、あくまでExcel君に押し付ける姿勢を貫く卑怯者である) つまり、過去18年間のデータと過去5年間のデータの傾向はほぼ同じと考えられる。 本当は、この類似性(母集団の等質性)を統計的に検討すればいいのだろうが、そんな知識や能力はない。なので直感的に 「うん、ほとんどいっしょ」 で済ませることにする。 これが本記事の結論である。 さて、だがこれだけでは面白くない。 この数式を更に弄ってみる。 まずこの得失点差と勝ち点の関係の近似式 推定平均勝ち点=平均得失点差×0.6714+1.3796 を仮に「J1勝ち点推定式」と呼ぼう。(マルキーニョス指数のような気の利いた命名は自分にはできない) 1.特異点を探せ J1勝ち点推定式 推定平均勝ち点=平均得失点差×0.6714+1.3796 を過去18年間の各チームの成績に当てはめてみよう。 そうすると、この数式から得られる勝ち点の予測値を大きく外れるチームが存在する。それを「特異点」として論じてみよう。 今回は、過去18年間ののべ320チームの1試合当たり平均得失点から、1試合当たり平均勝ち点を上記の数式で求め、実際に獲得した平均勝ち点と比較して、その差の大きさ(偏差)を計算してみた。 偏差の計算式は (推定勝ち点-実際の勝ち点)÷推定勝ち点 である。これを320データについて計算してみた。 標準偏差は0.157となった。グラフにしてみても、かなり良い感じに分布している。 当然である。もともそ、正の相関の強い母集合そのものを対象にした計算なのだから。 だが、やはり特異点は存在する。標準偏差の2倍を超えた差異がある5つのケースを「特異点」とした。 A-① 偏差=-2.04 2012年 札幌 A-② 偏差=-0.76 2014年 徳島 A-③ 偏差=-0.33 2003年 神戸 B-① 偏差=+0.38 2013年 大分 B-② 偏差=+0.36 2013年 磐田 まずA-①のケースを見てみよう。 この極端なマイナスの偏差。これを「気持ち切れちゃったシーズン」となずける。 当然のことだが、1点差で負けようが、5点さで負けようが、勝ち点はゼロである。 サッカーに限らず、気持ち切れちゃうと大量失点するのはよくあることだ。 2012年の札幌のケースを具体的に観てみると、4点差以上(サッカーの試合ではあまり多くないと思われる)の試合が6試合(全部敗戦)ある。これじゃ、得失点バランスが崩れるのは自明である。 A-②のケースも4点差以上のの敗戦が6試合。 A-③のケースは、4点差以上の敗戦は2試合だけだけど、3点差敗戦も5試合。なんといっても伝説の8失点試合も含まれる。ちなみに筆者は8失点試合を現地で観戦している。 一方プラス側の特異点はこれといった特徴が掴めなかった。 ここが素人分析の悲しさである(笑) 逆に言えば、この推定式、かなり使えるんじゃないか? 2.順位予測をしてみよう 先日、某巨大掲示板の「J1降格予想」スレッドで今後の対戦相手の強度を「平均得点」で計算していた。 それを「平均得失点」で見る方が妥当であろう、と考えた。 それを適用して、今シーズンの残りを計算してみた。 計算方法はこうだ。 ①各チームの残り対戦相手を調べる ②[自チームの平均得失点差]から[対戦相手の平均得失点差]を減算し、その試合の得失点差予測値とする。 ③得失点差予測値を、J1勝ち点推定式に当てはめて、勝ち点予測値とする。 ④残試合の勝ち点予測値の合計と、現有勝ち点の合計が最終勝ち点予測値となる。 ⑤全チームについてこれを計算すると、順位予測ができる。 もちろん、直近の補強により調子を上げた・下げたチームもあるだろうが、それをフォローするアイデアはまだ出ていない。 2021年J1 8月28日の試合開始前の状態での順位予想は! と公開したかったが、残留争いの渦中のチームを応援している方々には流石に失礼であろう、ということで結果は割愛する。 むしろ、自分の中で今の結果を最終結果と比較して考察するのをシーズン終了後の楽しみとしておきたい。 3.残留のための得失点差 J世界では 残留のための勝ち点は、試合数×1.1 とよく言われる。 では、これに我が「J1勝ち点推定式」を当てはめてみるとどうなるか? 今年は例外として、例年はJ1は34試合である。 残留のための目標勝ち点は38である。 これは ・8勝14分12敗 ・7勝17分14敗 ・6勝20分12敗 ・5勝23分10敗 あたりの星勘定になる。 一方、J1勝ち点推定式によると、得失点差-14までは残留できる、となる。 過去15年間(2005年~2019年)を観てみよう(2020年は降格がなかったので除外) 15年間で得失点差が-14より良かったチームで16以下となったのは6チーム (2008年東京V・2008年磐田・2010年FC東京・2012年G大坂・2012年神戸・2014年C大坂) 2012年のガンバと神戸は降格が意外といわれていたので、それを除けばほぼ実情を表しているといえるだろう。 (2012年のガンバなんて得失点差プラスで降格している) となると、残留だけを目指すのであれば、1試合平均得失点差-0.4までである。 結局、守備中心のチーム作りになるのであろうな。 ジャンル別一覧
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